2005年12月01日

収穫が沢山あったセミナー

今日はイアン・ダンバー博士のペットドッグ・トレーニングセミナーに行ってきました。
2日間に分けられた今回のセミナー、
今日は「家庭でのトレーニング及び行動カウンセリング、成犬のしつけ教室での教え方」
明日は「子イヌのしつけ教室での教え方」です。
イアン・ダンバー博士の講義内容はDVDも発売されるでしょうし、推奨サイトがありますので
ここで、あれもこれも公表するのは憚れますので、ご質問のある方はメールでも頂くとして^^;

イアン・ダンバー博士の講義終了後の、去年の奨学生の
(Red Herat-SIRIUS 奨学生制度という物があります)西村麻美さんの
2005年APDTカンファレンス体験レポートはとても感銘を受けました。
その中でも、このブログの常連様に読んで頂きたい事柄が
【印象に残ったエピソード】として発表されましたのでご本人の許可を頂き、
以下、掲載させて頂きます。



日本のシェルターで里子候補のスクリーニング用プロトコルを持っているところは稀だと思いますが
米国では多くのシェルターが取り入れています。その理由は主に二つあります。
一つはシェルターに来る動物が多く、全てを保護しきれないため、
里子に適した犬、適さない犬を選別し後者を安楽死させる必要がある事。
もう一つは事故があった際に訴訟を起こされないよう、犬の気質やこれから発生しうる問題などを
出来るだけ詳しく里親候補に説明する必要があるためです。
ブリードが特定できればそれぞれの犬種特有の行動から、
その犬に合った家庭を探す事が可能になります。
また他の犬との遊び方、食べ物やおもちゃといったものに対する反応を注意深く観察し
事故を起こす可能性が極めて低いことを確認できれば安心して里子へ出すことが出来るのです。
ここまでは特別珍しい話ではないのですが、印象的だったのは
ある母犬と5匹ほど(生後3週間程度)の仔犬たちのケース(ビデオ)です。

この母犬は野良犬で、妊娠している間も人間を警戒しながら食料を探し回ったりして
とてもストレスフルな環境で子犬を産みました。
その為、シェルターに保護されてからもあらゆるものに怯え、
ビデオカメラを向けるスタッフにも歯を剥く始末でした。
そして仔犬もそんな環境で育ったためスタッフが抱き上げると激しく抵抗し、
キューキューといつまでも泣いているのです。生後3週間の子犬です。
日本なら子犬を欲しがる人が我先にと引き取っていくでしょう。
ところがこのシェルターでは母犬ともにすべての子犬を安楽死させました。

生後3週間程度なら、これからの扱い方次第でどうにでもなると思ってしまいませんか?

ボランティアをしながら「子犬はいないの?」という言葉を飽きるほど聞いてきた私は
この安楽死の意味をしばらく考える事になりました。
しかし、母犬のストレスホルモンの影響を受けたこの子犬たちには
様々な精神障害の兆候が見えており
そんな
爆弾を抱えたまま里子に出すなど無責任な事は出来ない
というTrishの説明は十分納得のいくものでした。
仮にこの子犬たちが無事に引き取られ徹底的な社会化をされたとしても、
先天的な精神障害はいつ表面化するか分かりません。
表面化した時に咬傷事故を起こしたり、飼い主が扱いきれなくなったら
再びシェルター行きとなってしまいます。
シェルターに返されるならまだしも、飼い主から体罰を受けたり庭に一生つながれっぱなしという
「生き地獄」を味わう可能性すらあります。
この子犬たちが幸せな一生を送れるという確信を持てないし、
安全な犬として自信を持って社会に送り出すことが出来ない、
それならばということで安楽死の選択をしたのでした。

この親子が仮に今全米で大きな問題となっているピットブルやそのミックスだったとしたら、
里子にだすにあたってさらに大きな壁が存在します。
ピットでも、いわゆるファイティングドッグの血統ではない犬は
温和な気質を持った個体も多いそうですが元は闘牛や闘犬用に作り出された犬ですから、
遺伝子レベルで見ればケンカで相手を殺したとしてもなんの不思議もありません。
生まれつき恐がりのこの子犬たちが何らかの刺激に対する恐怖から
人間や他の犬を攻撃したのだとしてもピット系というだけで事故はメディアに大きく取り上げられ、
ただでさえ芳しくないこの犬種のイメージをさらに傷つけることになってしまうのです。
なんとも後味の悪い話でしたが、シェルターのあり方についてつくづく考えさせられたエピソードでした。


西村さんの犬との関わりは動物愛護団体のボランティアから始まりました。
彼女はこのカンファレンスで「シェルターの役割は犬や猫の命を救うことのみならず、
里子として社会に送り出す動物に対しての責任をもつことなのだと学びました。」
と語ります。
ダンバー博士とも、カンファレンス後、「シェルターかパピークラス(問題行動の予防)か」と言う事で
かなり論議を交わされたようですが、パピートレーニングの普及の結果、
シェルターの規模や数が減少する事はあっても、存在自体がなくなることはない。
シェルターをサンクチュアリ化させない為、そして危険な犬や不幸な一生を送る可能性がある犬を
社会に送り出さない為、「ブリードを特定して起こり得る問題行動の予測」と
行動観察によるスクリーニングの徹底」などが重要と感じたそうです。
この他にも、日本と米国のトレーニング事情の違いや日本のトレーナー、そして飼い主に伝えたい事など
内容の濃い体験レポートで、もし機会があれば、それらもご紹介できればと思っています。
このような素晴らしく先見の明のある若いトレーナーさんと出会えただけでも大収穫のセミナーでした。

ニックネーム ちはりん at 22:18| Comment(14) | TrackBack(3) | ママの独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
充実した時間だったみたいで良かったね〜♪
さっきもエッセンスを沢山ありがとう!
遅くまでゴメンね。
あ、下の方のレス漏れもしかしてワタシのせい〜?(笑

明日もいっぱい吸収してきてね〜!!
Posted by yukari. at 2005年12月02日 01:53
ちはりん様こんにちは。ヘビーなテーマでコメントしづらいですね。
安楽死の是や非を問いだすと、堂々巡りになってしまうだけでしょうし。
殺すのは可哀想だといいながら、オリに入れられている犬がいます。
なにが幸せなのか、考えないといけませんね。

作品市場でイボンヌとわたしが金賞いただけました。紹介and投票して
くださった皆様に、深く感謝いたします。本当にありがとうございました。
Posted by ペシミ at 2005年12月02日 10:05
とても興味深く、でも難しいテーマです。ちはりんさんのお時間がある時にでも 西村さんの体験レポートまたご紹介いただければ うれしいです。
イアン・ダンバー博士のことも もっと知りたくなりました。自分でも調べてみますが、もしお勧めの本などありましたら お教え下さいね。
Posted by GUU管理人 at 2005年12月02日 12:07
「命の選別」嫌な言葉ですがじっさいは避けては通れないんでしょうね。とくにいまの日本では直視せずには済まされない状況ですね。

考えさせられる問題です。
Posted by 犬猫屋敷の管理人 at 2005年12月02日 18:33
う〜ん。。。
今日本で直面している問題で、ちゃんと向き合って考えないといけないテーマですね。
安楽死と聞くとやはり可哀想という気持ちになります。
でも生きているけど、生きていない生活をさせられるかもしれない犬を思うと、
ただ可哀想と言っているのは無責任で、結局犬を苦しめてしまい、
何の解決にもならなくて、また同じことの繰り返しになってしまうのではと思います。
犬にとっての幸せはとは何か?を考えることも難しいですが、
できるならみんな幸せになって欲しい、不幸な犬をこれ以上増やしたくない、
今、家族になったまろんに幸せな一生を送って欲しいと思います。
Posted by hena at 2005年12月03日 01:04
昨日お知らせをいただいてから、一日考えていました。
でも、今の自分の中ではやはり答えは出てこない・・
こういう考えがが欧米では主流になっているのかな?
本来、シビアにみてもこうあるべきなのかもしれないけど、今の自分では消化できないですね、まだ・・・・
今の日本ではこういうシステム自体がないし、誰もやれる人がいないでしょう?
今の日本、そしてわたしの気持ちの中では、まだ答えがみつからないな。
Posted by 華ママ at 2005年12月03日 01:55
私も欧米の動物保護施設(シェルター)を実際に見て、
ボランティアもして深く考えさせられました。
”命”に対する責任の重さを常に考えるようになりました。
ただ、日本人は民族的に「淘汰」や「安楽死」はなかなか
受け入れられないでしょうね…
でも、”命”についてはもっともっと真剣に考え取り組まなければ
ならない時期に来ていると思います。
このようなセミナー、北海道でもあってほしい…うらやましいです。
北海道にはセミナーは獣医学会くらいで、このようなセミナーは皆無…
北海道はかなり遅れています…何とかしなければ!
(まとまりのない文章ですみません…)

Posted by のらのら at 2005年12月03日 14:02
★yukari.様★

朝の満員電車に乗って行くなんて〇十年ぶりだわ(笑)
でもね、やって来た事、考えている方向性、間違ってなかったって再確認できて
奈落の底に突き落とされていた【自信】というものが復活した。やるきが湧いて来たわ♪
Posted by ちはりん at 2005年12月04日 14:37
★ペシミ様★

安楽死の是非以前に、すべき事が日本の保護団体にはあります。
欧米では子供でも自分の愛犬・愛猫の命に対する責任感がとても強く
「苦しませないで!安楽死させます!」と泣いて獣医にすがる子供の映像を沢山見ました。
絶対に回復の見込みのない例に関しては日本でも考えなければならない所ですね。
檻の中での多頭飼育やしつけをしない事をダンバー博士は【家畜飼い】と表現されていました。
教育しないなら羊やニワトリを飼いなさいと。
Posted by ちはりん at 2005年12月04日 14:39
★GUU様★

ご注文の本、購入してまいりましたよ。サインも快くしていただきました♪
来週中にお渡しする機会ができるかな?
西村さんの体験レポートも、また紹介させていただきますね。
Posted by ちはりん at 2005年12月04日 14:40
★犬猫屋敷の管理人様★

実際、愛護センターで年間16万頭が殺処分に遭っている現実から、
日本でだって選別は行われているんですよ。その事から目をそらさないで欲しい。
ボランティア団体の選別してくる基準とは??見た目可愛さ?月齢?
そこで見落としている部分に目を向けて欲しく、掲載させて頂いた記事でした。
想像して思考して欲しくてあえて説明は避けたのですが、、間違いでしたかねぇ・・。
今度から管理人様に添削依頼してから記事アップしようかなぁ。。。
Posted by ちはりん at 2005年12月04日 14:42
★hena様★

hena様のように、自分の愛犬ときちんと向き合い、幸せにしてやろうと努力を惜しまない
そして、反省・精進してくださる、そんな飼い主様が増える事、願ってやまないです。
一人一人がそうなれば、飼育放棄など起こらない。でもそんな事夢のまた夢(涙)
まろんちゃんは幸せです。hena様のような方と暮らせるのだもの。
Posted by ちはりん at 2005年12月04日 14:43
★華ママ★

答えが出てこないのは安楽死の是非?団体のあり方?
そんなの、答えださなくていいよ♪
今、あと少しだけ頑張れば自分に出来ること探してくれればいいと思います。
いきなり変える事は無理なんですから、「せめて」という気持ちが大切だと思います。
ダンバー博士のパピートレーニングのシュラバスのカリキュラムメニュー、今度コピーして送るよ。
預かりっ子のしつけに役立ててくれたら嬉しい。
Posted by ちはりん at 2005年12月04日 14:44
★のらのら様★

のらのら様のような向上心や探究心のある方が東京にいらっしゃれば・・と
こちらこそ思ってしまいます。
セミナー2日目に隣りに座られた方は九州からいらしていましたよ。
英語力の乏しい私は通訳ありのセミナーしか参加できませんが、
のらのら様なら英語セミナーにも参加できる。英語セミナーはディスカッションもあります。
来年は是非!!!





Posted by ちはりん at 2005年12月04日 14:45
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